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閃光


 誰もいない日曜日。
 母さんは、娘と二人で朝から銀座に買い物に行った。
 特に何もすることがなく、だらだらと時間が過ぎていった。
 昼は店屋物にするかと思ったが、散歩がてら商店街に買い物に行った。
 魚屋の店先に、バケツに入ったドジョウが目に入った。私はドジョウを買うと、酒屋により〈辛口〉のお酒を買って帰った。
 生きた活きのいいドジョウをボールに入れ、醤油を注いでドジョウが弱まるまで蓋をして置いておく。弱ったところで汁けとぬめりをよく取った後、片栗粉をまぶして油の海の中に入れてやる。片栗粉でお色直ししたドジョウが、油から出てくると「ドジョウの唐揚げ」と言う名に変わっていた。
 小皿にドジョウの唐揚げを盛りつけると、酒を持ってリビングへ行く。さっきまで明るかった空が、今では薄暗くなり一雨来そうな雰囲気だった。
 部屋の電気を付けようとしたとき、一瞬紫色の閃光が部屋を満たした。
 ちょっと間をおいてから空が鳴った。
 雷だ。
 私は、部屋の電気を付けるのをやめ、ドジョウとお酒を片手に夏の風物詩の観賞と決め込んだ。




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結婚


 長女の小百合が結婚した。
 晩酌をしてくれていた小百合がいなくなり、ここ何日間か家で酒を飲まなくなった。
 寂しいものである。
 一緒に酒を酌み交わしていたわけではない。子供の頃からの習慣で、酒をついでくれるだけである。
 「これはあたしの仕事」と幼い頃の小百合の声が聞こえてくる。
 あれから二十年近くほぼ毎日晩酌してくれた。
 今は弘幸君に晩酌でもしているのであろう。
 寂しいものである。
 「ただいまー」次女の美和が帰ってきた。七時を少し回った時間である。会社に勤めるようになってから、こんなに早く帰ってくるのは初めてではないかと思えた。
 「さぁ、一緒に飲もうか」美和は帰ってくるなり、テーブルの上に酒を置いた。「吟醸生貯蔵酒」と書かれたお酒の栓をあけ、グラスに注ぐ。フルーティな香りと爽やかな飲み心地の酒だった。
 「お前、酒が飲めるのか」
 「お父さんの子供だし、このお酒だったら飲めるからさ」そう言うと美和は笑いながらグラスに酒を満たした。
 「よぉし、ご返杯だ」私は美和のグラスに注ぎながら、楽しみが一つ増えた事に感謝した。





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古都


 京都の夏は暑い。
 久しぶりに学生時代の友人たちと遊びに来た。
 それも、女三人の色気のない旅。中学三年の修学旅行以来だから、かれこれ十云年。あの頃の京都は、ただ辛気くさい処でしかなく、修学旅行の名目上、興味のないお寺や建物を見て回らなければならなかった。
 修学旅行の楽しい思い出なんて、宿泊した旅館を抜け出してその頃つきあっていた彼とデートしたことくらいだった。
 今回の旅行で気がついた事だけど、私たちは年をとった。お寺も京都の古い街並みもみんなあの頃と違って見える。心が落ち着き、歴史の重みを感じ、古都の空気を感じている。もちろん日焼けを気にしながら。
 浴衣に団扇。旅館でおいしい京料理に舌鼓を打つ。あの頃と違うのは、テーブルにお酒があること。三人三様、みんな好きなお酒を口に運んでいる。私は、フルーティな風味の生酒を氷を入れたグラスで飲み、洋子は「焙炒造りよ」と得意げに生酒を飲んでいる。智美は私と洋子の料理批評を聞きながら、淡々と伏見のお酒を味わっていた。
 「明日は、酒蔵でも廻るか」洋子が叫んだ。ほんのりと頬が紅くなっている。結構、京都お酒が気に入ったみたい。
 私も、智美も異論は唱えなかった。





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SAWAKAWA・SAKI

Author:SAWAKAWA・SAKI
沢川沙樹です。
小説書いています。
たま~に画も描いたりしています。

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