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ソムリエ


 四谷にある懐石料理屋に招待された。
 「欅」という名の店だ。
 表通りの喧噪から外れた所にその店はあった。見た目は普通の一軒家で、小さな看板が出ている以外、お店らしい佇まいを見つけることはできなかった。
 料理はおまかせで、お酒だけを指名した。
 前菜と一緒にお酒が出てきた。彼は一口飲むと首を傾げていた。
 どうしたのかと聞くと、どうも注文したお酒と違うらしい。
 少しすると背中を丸めた気のよさそうな老人が座敷に現れた。
 「おたのみしたお酒と違うので、変だと思いましたか?」老人はにこやかに笑っていった。
 「前菜はイカの沖漬けだったので、濃醇辛口のお酒が合うと思いまして、勝手にかえさせていただきました。本日のコースは旬の魚を用意していますので、次の刺身の盛り合わせには淡麗辛口のお酒をご用意させていただいております。お酒も料理も作り手が一生懸命丹精込めて造ったものですから、お互いに殺し合う食べ方ではなく、お互いが引き立つような組み合わせで食事をしていただきたい。そう私は思っています。ですが、どうしてもあの酒でなければというのであれば、私は控えさせて
いただきます」
 「日本酒のソムリエですね」彼は笑っていった。
 「恥ずかしながら」老人は笑顔で答えた。
 「予算の許す範囲で、美味しいお酒と美味しい料理をお願いします」
 その日は、本当に美味しい一日だった。



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Author:SAWAKAWA・SAKI
沢川沙樹です。
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